Human Occupational Professional Education
メールマガジン
 
 

学校選択と受験のノウハウ

看護学校入試の現状  
20世紀末の構造的不況から、ライセンス獲得志望者が急増しております。そのもっとも人数の多い看護・医療系の入試では、中には10倍を超える競争率も珍しくない受験状況となっています。
学校の種類と教科別入試対策
レギュラーコース
面接試験
進学コース
おわりに

現在の看護婦・士養成機関の種類とその数、定員などから競争率を見てみましょう。
レギュラーコースは、大学が90校、短大が51校、専門学校が496校、
進学コースは、短大2年課程13校、専門学校が353校、准看護婦養成所が392校の合計1,395校あります。
競争率は、進学コース 2.7倍、准看コースが1.8倍に対しレギュラーコースは大学5.7倍、短期大学5.1倍、専門学校は 4.8倍となっています。
 これは全国平均ですから都市圏では、10倍を超える学校も珍しくはなく、中には20倍に達している学校もあります。レギュラーコースを希望する受験生は、厳しい受験競争を勝ち抜くために、本気で受験勉強に取り組む姿勢を持たなくてはなりません。

-------------------------------------------------------------------------UP↑

学校の種類と教科別入試対策
看護学校の入試は、
@学力評価
A人物評価 の2本立てで行われます。
一般大学よりも、面接、健康診断が重視されるのはいうまでもありませんが、近年は学力評価のウェイトが高まってきていることを注意しなくてはなりません。学力試験の結果を見てから、人数をしぼって面接を行うところが圧倒的に多くなってきています。
国公立の4年制大学はもちろんのこと、短大などでもほとんど学力評価本位で合格させるところもあるほどですが、面接本位で合格を決定する学校はまずありません。これは、看護職の仕事内容が、基礎学力・思考力をより重視するようになってきているからです。

1.レギュラーコース
 このコースは、最も多くの人が目指すコースです。このコースの中にもはいくつもの受験型があります。一般的なのが4教科4科目型、英語・数学・国語・理科(生物、化学、物理から選択)ですが、各校の出題分野(範囲)はさまざまで、とても1つの型にはくくれません。
また、分類された1つの型のみを志望する人は少なく、ほとんどの方が何タイプかの学校を併願受験することを考えますと、受験勉強を始める際には、選択科目をしっかりと考えておかなくてはなりません。科目数だけを多くしておくことが必ずしも得策とはいえないからです。高校での履修科目や、学力に照らし合わせて、受験計画を立てる必要があります。

4年制大学
看護大学は国公立私立とも4年制です。前項でも述べましたように、看護大学は看護婦・士の受験資格とともに、保健婦・助産婦の受験資格も卒業と同時に得られます。現在、短大から大学への移行がかなり進んでおります。競争率にかかわらず、偏差値は高く、最低でも当会の模試で60以上は必要です。国立の4年制は最難関です。

短期大学
現在短期大学は、国立の医療技術短期大学が10校、公立が20校、私立が21校の計51校あります。新設の大学・短期大学はここ数年、毎年増設されておりますので、学校情報には気をつけておくべきです。競争率は、一般的に専門学校に比べると低いようです。
面接は大半の学校では行われず、学力が大きなウェートを占めます。受験生に国立4年制と併願する人がいるのは4教科型の理科2科目で、大学入試センター試験も受験可能だからでしょう。基本的には大学受験とまったく変わらないと考えるべきです。
公立の看護短大と国公立看護専門学校は最も多数を占め、受験型からすれば非常に似通っておりますので、どちらも併願が可能です。競争率は大変高く、同等の学力の人が受験しますので、小さなミスが命取りになります。

専門学校
受験科目は4年制大学、短期大学に比べると若干少なくなりますが、伝統ある学校も多く、受験日も他校とずれているため、競争率は驚くほど高くなります。現在ではスベリ止めという意識は捨てなくてはなりません。  

科目別のポイント
【英語】
 大学・短大・専門学校を問わず、難度はさまざまです。ほとんどが英語氈Eの出題範囲ですから、高校英語の学力を問う問題が多いです。しかし、医療技術短大、専門学校の上位校になると、4年制大学入試と同等レベルの出題となります。平均的に専門学校は、文法問題(穴埋め、書き換え)などが中心ですが、大学・短大になると長文読解50〜60%、文法35〜40%、英作文10〜15%という比率で、かなり長文の総合問題がめだってきます。
今年度は、専門学校も長文総合問題の出題割合が増えております。
受験生は以下の各項目に注意して受験勉強を進めてください。
・基本的な文法項目は完全にマスターする。
・構文の理解はあらゆる基礎であるから、最初にまとめておく。
・前置詞のからんだイディオムに要注意。
・完成問題の会話文や定型的表現力の練習をしておく。
・医療英単語を過去問題から拾い出して覚える。
・ハイレベルの学校に対しては上記をマスターの上、長文総合問題集を一冊、確実にやり遂げる。

【数学】
受験校を選択する上で、数学の範囲は大きなファクターとなります。国立医療技術短大の約半数は数氓`、数Bが課せられますが、あとは数氓`が中心というところもあるように、数氓ヘ極めて重要となります。文字が多く場合わけを必要とする問題など難度の高い問題も出題されます。その他の分野は、均等に出題されますが、入試問題としては4年制大学に匹敵するものも時として出題されますので、基本問題のみならず、標準的な入試問題には一通り目を通しておく必要があります。
公立医療技術短大は、数氓`が主で、数を課しているところはさほど多くはありません。私立短大や専門学校は、理科を含めて選択というところもあります。
専門学校のうち、数氓フみが半数以上、その他の学校は何らかの分野とのだきあわせですが、範囲の全般から出題されますので山を張ることは避けましょう。
以下に注意点をあげます。
・難問に目を奪われることなく、基本問題を確実にこなせる計画を立てる。
・問題を解きながら、公式がどのように活用されるのかをノートにはっきりと残す。
・受験校の過去問題は少なくとも受験1か月前には一通り解いておき、類題は練習しておく。

 

【国語】
出題範囲に関しては、医療短大の多くは現代国語、古典の両方が必要ですが、漢文はほとんど出題されておりません。
医療短大では30〜 150字程度の論述形式が頻出したり、口語文法、ことわざ、慣用句、故事成語、反意語などの語句の知識問題、短歌、俳句がよく出題されますので、要注意です。

○現代文
問題で問われるのは、主に読解力と問題形式適応力です。読解力をつけるには日頃から“読む”習慣をつけることです。小説・随筆・論説文などの各ジャンルの書物をともかく1冊以上読んでみることです。また、新聞のコラムや社説などを毎日読み続けることも大事な訓練となります。
形式適応力は、中級程度の問題集で解説の詳しいものを1日に1題、毎日こなしたいものです。論述問題に関しては、解答に必要な要素をあげてから文章化するトレーニングを積む必要があります。
 国語常識などは、国語便覧や常識問題集などで要点を整理しておきます。とくに四字熟語は頻出です。

○古文
 古文を課している学校は上位校であることが多いので、難度の高いものもありますが、平均的には中級レベルです。答え方が論述式であることにさえ注意すればとくに古文として高度な内容ではありません。基本事項をいかに文章全体の理解に応用できるかを見るものです。重要古語を確実に覚え、文法をしっかりと把握しておけば、大半の問題の7割は確実に得点できます。

○小論文・作文
大学、医療短大系で小論文あるいは作文を課している学校は年々増加しており、専門学校では85%以上の学校で実施されております。字数は 200字〜1200字まで(600 字〜800 字が最も多い)とさまざまですが、作文であれ、小論文であれ、要求されているのは言葉による表現力、ならびに人物評価の観点から「人間の生命に対する認識と感受性、自分と他者、社会との位置づけ、責任感、協調性」などが見られます。
 受験生は、志望校の傾向と、その扱い(点数化されるか、参考程度か)を調べたうえで、日常的に書く練習をしておきましょう。
 小論文・作文は面接試験の一環として利用されることが多いので、指摘されても答えられるような内容にまとめておくことも必要です。

【理科】
理科の選択については、とくによく考えておく必要があります。夏以降、1科目から2科目への変更はまず不可能ですから、最初から生物か化学のどちらか1科目でいくのか、生物・化学の2科目で勉強を始めるのか、方針をはっきりさせておく必要があります。
受験科目としては、国立4年制を除くなら、ほとんど生物・化学・物理から1科目の選択です。

○生物
最も多くの看護受験生が選択しており、看護学に関係するうえで学習しやすく感じますが、非常に差がつきにくい科目です。言い換えれば、ある程度得点できて当然とされ、小さなミスが重なると大差をあけられるということになりますので、要注意です。
効率的な学習として、
・全分野を1冊のノートにまとめ、常にメモを増やしながら、いつもそこに帰れるようにしておこう。
・頻出重要事項を理解し、覚えよう。

血液の各成分の名前と働き 遺伝のしくみ 細胞の構造と働き DNAについてホルモンの作用 呼吸と光合成の基本 初期発生について 病原菌 生物学史 など
山を張るのは危険です。幅広く基本事項を確実に覚えることにつきます。難しい問題集を何冊もやろうとするよりも基本問題集を3度繰り返す方がずっと実りが多くなります。国公立系では、記述式の難問がよく出題されます。これについては、類題による演習がかなり必要です。基礎力がつけばすぐに始めた方がよいでしょう。

○化学
看護系の化学は、とくに目立つ傾向はありません。基本事項はまんべんなく学習しなければなりません。化学は小さな理解の積み重ねの学問ですから、後述のキーポイントをマスターしたうえで、受験前に、天然高分子あたりをとくに見直せばいいでしょう。
キーポイント
原子構造の説明と原子量の定義 モル濃度 規定などの溶液の理解 凝固点降下 沸点上昇の公式 塩 酸素 中和 PHの理解 ボルタ電池などの反応式 化学反応からの生成物の量の出し方 陽イオン分析の原理 異性体の作り方 主な官能基の構造と性質 有機化合物の反応と実験式

 出題分野は有機3分の1に対し、無機3分の2となっており、有機の占める割合は年々増加しています。すべてを含んだ基本問題集をやりこなすことが大事な対策となります。とくに計算問題が苦手な人は、解答を見て納得するのではなく、答えが合うまで何度でも類題を演習することです。

《まとめとして》
看護系の入試問題はまんべんなく全分野からの出題が多く、基本的な問題が大半です。ですから誰もが解けるような問題は確実に解けるようにしておかなくてはなりません。そして、1科目でも得意科目を作れば、申し分ありません。模擬試験などで自分の実力を把握することも今後の学習の重要な指針となります。積極的に受けておくといいでしょう。

【面接試験】
看護系全般の入学試験で、面接は大変重要なポイントとなります。看護婦・士という職業は、患者をはじめとして、多くの人間と接する職業ですから他者の気持ちを理解できる資質と姿勢がとりわけ要求されます。
もちろん、5 〜20分程度の面接時間では試験管にも看護婦・士としてふさわしいかどうか、完全には捉えられないでしょう。しかし、明らかに不向きと思われるような印象を与えれば、たとえ学科がトップレベルにあっても容赦なく不合格にされます。また、学力以外の点(年齢など)で不利であっても、面接評価で合格に至ることもあります。
面接には、
@試験管と受験生の1対1
A試験管と受験生の複数対複数(これが最も多い)
B受験生同士が討論をするのを観察する
C作業をやらせて、その様子を観察する
など多くの形式があります。
どのような形式で実施されるかは事前に調べておくとよいでしょう。しかし、どれをとってみても、単なる形式に終らず、可能な限り受験生の資質を捉えようと努力し、時にはきつい言葉を投げかけて反応を見る場合もありますから、軽い考えで臨まないことです。

-------------------------------------------------------------------------UP↑

2.進学コース
すでに准看護婦の資格を持っている人が正看護婦になるための制度です。大半の学校の競争率は2.3 〜2.7 倍と低く、(中には6 〜7 倍の学校もあります)合格最低点もそう高くはありません。筆記試験は一般科目のみ、あるいは専門科目を加えている学校が多いです。一般科目は中学卒業レベルから高校1〜2年生のレベルまでですが、受験を決意したならしっかりと計画を立てて、毎日少しの時間でも勉強に取り組むようにしたいものです。
また、専門科目は准看護婦資格試験に準じた問題が多く、臨床科目は勤務中に修得する内容が多いようです。
大半の方は仕事を満ちながら、多忙な中で受験に臨むわけですから、強固な意志を持ちませんと初期の目標を持続できません。逆にいえば、大半の受験生はさほど勉強してこないで受験するのですから、本格的に受験勉強をすれば、確実に合格できます。 
 看護進学会で学んだ『進学コース』の受験生は3年連続100%合格しました。 作文、面接試験はレギュラーコースに準じますので参照してください。   

   
受験校選択の留意点
《時期》  
 入試要項は7月から10月の間にほとんど出揃いますから、以下の要領で学校を選択するとよいでしょう。入試要項は面倒でも11月末には受験可能性のあるところは取り寄せておくべきです。高校で調査書を準備してもらったり、健康診断をあらかじめ行わなければならない場合が多いからです。これらのことを踏まえて10月末には見通しを立てておきたいものです。
@応募条件         
身長、健康面、年齢などを要項に制限を明記していることがあります。(例えば:身長150cm 以上。22歳以下。未婚者。矯正視力0.7 以上など)明記していなくても該当者は敬遠されることもありますが逆に人生経験と熱意により40歳で公立看護短大に合格した例もあります。受験校の入試要項をよく調べてください。また、既往症に関しても受験生のかかった病院の診断よりも、看護学校が属する病院の診断を優先することもありますので、記入の際には注意しておきたいものです。
A受験科目数
 自分が勉強している内容に沿って考えましょう。科目数が少なくてすむところは、高倍率になりがちです。また、科目数が多いと負担は大きくなります。

B数学や理科の範囲
看護受験生には、数学、理科に苦手意識を持っている人が多いことから、数氓`以外に数Bを課している学校は競争率が下がり気味です。しかし、それらの学校は、数学に自信がある人が受験する場合が多いので、少数激戦になることが予想されます。
C学校の偏差値と受験生の偏差値
 各学校の偏差値は年ごとに大きな差があります。それは入試日の違いや倍率によるところが大きいからです。偏差値は、いわゆるめどに過ぎません。それよりも重要なのは受験生本人の偏差値です。積極的に模擬試験を受けて、自分の力を把握することにより、はじめて学校偏差値と照らし合わせることができます。自らの成績を基にして学校選びをしましよう。
D入試日の重複 
入試日が多く重なった場合は、受験者が分散するので競争率は低くなるはずですが、時として1か所に集中することがあります。
もし、そこに第一志望校がなければ、安全策として集中するところは避けた方が無難です。重複を避けた入試日の専門学校は、過去の倍率に比して、高倍率になっていることが多いので要注意です。
Eスベリ止めの意味
文字通り「スベリ止め」という言葉にとらわれない方がいいでしょう。現在の状況では、「スベリ止め」はないといった方が適切です。自分の学力よりやや上の目標校、自分の学力にあった学校、やや安心だと思える学校の三段階を設定して、受験校を選択すべきでしょう。

-------------------------------------------------------------------------UP↑

●おわりに
 ここまで唯一入試という観点から述べてきました。言うまでもなく、その前提には『なぜ看護・医療職か』という問いがあるのは当然です。しかし、現在の看護学校の入試はやはり競争であることも否めません。
どんな入試でもそうですが、打ち克つべきは弱い自分自身です。それを乗り越えてこそ、皆さんの看護婦・士、医療従事者としての資質と適性が花開くものと信じます。離職率の高さ、養成の困難さという側面をも認識しつつ、少しでも自らの天職に近づけるよう、精一杯の努力をしていただきたいと念じております。
どんなご相談もお気軽にお問い合わせください。   
info@kangohope.com

-------------------------------------------------------------------------HOME