◇青森県立保健大学推薦入試(看護学科) 120分 1000字以内

【問題文】

 

 次の英文を読み、後の問いに答えなさい。

 

I have a friend who teaches at a small-town university. His pet'

theory is there are three alternatives to choose from in living one’s life."One is to set a future target and strive to attain it through daily effort," he said. "Another is to live in strict observance of rules and traditions from

the past."

 

"But young people today warm only to the third alternative,which is to live entirely in the present," he lamented2. "The present is nothing more than3 a momentary flash of time that bridges the past and the future," he would argue with his students. " If the present is all you are  interested in, all you get will be fragmented4 experiences like pleasures and thrills of the moment." But such lines of reasoning5 hardly ever register6 with his students, he complained.

 

He loves plants and earth and water, fresh air and all living things. These have nothing to do with the subject he teaches, but he has a small vegetable garden of his own on campus. From time to time, he invites his students to his mini-farm." That’s when you see those kids change," he noted. "They realize their carpe diem7 philosophy simply won't do when they are forced to learn from the past and think for the future."

 

For students who have been trained to tackle only problems that  have ready answers, growing vegetables is a totally baffling8 experience.They are forced to figure out9 on their own how long it will take the seeds to germinate10, how they should share the task of daily watering, when the produce will be ready for harvesting, and what produce tastes best in what season. "Despita all those uroknowns, however, things somehow work out fine in the end," said my friend. "And that really opens those kids' eyes."

「朝日新聞「天声人語」、秋98」

<英文訳注>

1. pet

  得意の、おはこの→a pet subject 得意の科目

2.lament

    嘆く、嘆き悲しむ

3.nothing more than

  〜とまったく同様、〜にすぎない

4.fragmented

  adj.(ばらばらに)壊れた、崩壊した、断片的な

5.reasoning

  推論、論法、論拠

6.register

  〜に印象を残す、銘記される(with);The name simply did not register(with me).その名前  がどうしても覚えられなかった。

7.carpe diem

  (将来の憂患をおもわず)現在を楽しめ。ラテン語の“enjoy the day”の意。

8.baffling

   くじく、当惑させる、不可解な

9.figure out

   〜を理解する、〜を解く、解決する

10.germinate

   (種子が)芽を出す、芽生える

 

設問1 この文章を読んで、あなたの意見を和文1,000字以内で述べなさい。

設問2 この文章に表題をつけなさい。

 

 

 

【解説】

 英文を読み取り、日本語で小論文を書くという設問は、 英語力と 国語力・思考力が同時に試されている。英語の苦手な受験生は最初から敬遠するかもしれないが、概してこの種の英文はさほど難しくはないので、あきらめずに果敢に挑戦すべきである。

  本問もある程度のボギャブラリーがあれば、読みこなせる比較的平易な英文である。(少なくとも国立大学受験生はこの程度の英文は読みこなしてほしいというのが、出題者の気持ちだろう)しかも、親切に4段落に区切ってあるし、単語数も300語程度である。ゆっくり読んでも30分で充分読みこなせる。

 出典は朝日新聞の天声人語の英訳文。

 英文の大意を把握する。

 パラグラフごとに要旨をまとめる。

 キーワードに印をつける。

 筆者の意見をまとめる。  ここまで30分以内で

 構想メモをつくる。

 原稿用紙にいきなり書き出す前に、何を書くか、構想メモを作る。

 主題をつかむ。筆者の意見は何か。

 自分はどう思うのか。(どう考えるか)

 何を中心に書くのか、論点を明確にする。ここまで30分以内で。

 原稿に向かって、一気に書きあげる。この際、書きながら推敲し、推敲しながら書く。

【論旨の展開法】

  筆者の若者に関する批評を踏まえ、何を言おうとしているのか、それについて自分はどう考えるのか。人間の生き方についての記事から、自分を含む若い世代の人たちがどのように生きてきて、これからどのように生きたいのか、字数制限に沿ってまとめる。

【全訳】

 小都市の大学で教えている友人がいる。彼の持論は、人が生きていくのに3つの洗濯がある、というものだ。「1つは未来に目標を定め、それに到達するように日々努力をする。2つめは、過去の伝統や慣習を厳守すること」だという。

 

 「しかし、今の若者は3つめの選択、今にしか関心を示さない。」と嘆く。「今は、過去と未来をつなぐ一瞬のひらめきにすぎない。君たちが今だけただ興味を向けるなら、一瞬の面白さやスリルといった断片的な経験しか得られない。」と説いても、学生たちは耳を貸そうとはしない。

 

 彼は植物や土や水、いい空気や生き物が好きだ。教えている科目とは関係ないが、キャンパスに自分の小さな菜園を持っていて、時々学生を招くことがある。「そのとき、彼らに変化があらわれるんだ。」と注目する。「未来を思い過去に学ぶことに直面したとき、“現在を楽しめ”という彼らの哲学では単純にたちゆかなくなるんだよ。」

 

 答えのある問題を解くことだけを習ってきた学生には、野菜を育てるのは全く困惑することばかりだ。自分たちの種がいつ芽を出すのか、毎日の水やり作業をどう分担するのか、作物の収穫はいつか、どの時期に食べるのが一番おいしいか、といったことをいやでも覚えさせられる。「何も知らないにもかかわらず、最後にはどうにかうまく行く。学生たちの目が本当に開くんだ。」と友は言う。

 

【解答例】

設問1

「今が楽しければそれで良い」という言葉は、最近耳にすることが多い。本文に書かれている3つの生き方の中で、最も安易で発展性の乏しいものである。そこには日々の努力を積み重ねる忍耐も、古い約束事に従う恭順さもない。苦労せず楽しみを手に入れるのにこしたことはないが、筆者の言うように、身近な興味ばかりに気をとられ、先の見えないことに努力するのは無駄なことのように思われる風潮が生まれているようだ。

 また、若者だけでなく、何事に対しても経験の乏しい子供が増えていると指摘されて久しい。初日の出を見たことがない、川に入った事がない、トマトやキュウリがなっているのを見たことがないなど、枚挙にいとまない。

 しかし、これらの風潮は固定されたものではなく、実は非常に流動的なものではないだろうか。おそらく筆者の述べる学生たちは、今まで土に触れ、草木を育てた経験がなかったのだろう。何かを育てるという行為は苦労や努力を必要とするものであり、経験したことのない者にとってはわからないことだらけである。経験の場と適切なアドバイザーがいれば、この学生たちのように自分の体験として身につけることができるのではないだろうか。種まきから収穫までの予想もつかない時間と作業を通して、学生たちは“今”何をするべきか、“今”が未来にどう関わっていくかをいつのまにか手に入れたようだ。それこそが彼らの変容であり、目の輝きなのだろう。

 幸いにも野菜作りの経験から、“今”は過去から未来への通過点に過ぎないことを体得した学生は別として、現実には多くの若者が“今”の世界から抜け出せずにいる。生活を体験させられない大人たちは、出来合いの知識で埋め合わせをしてきたのだろう。しかし、実体験のない知識は、もはや興味を引かれるものではなく、手近な楽しみを求めるのは避けられない。ここで気をつけなければならないのは、彼らの生きている今の社会を作ったのは、若者ではなく大人であるということ。そして、それを見て育ったのが筆者の描く学生に代表される若者ではないだろうか。人は努力なしで楽しみや安易な生活を手に入れることに熱中し、そういう社会を作ってきた。もちろん、豊かで便利な生活に異論はないが、自分のライフスタイルとして選び取る時期が、そろそろ来ているように思われる。(955字)

 

設問2

若者の“今”だけ思考